まずはじめに
2002年当時、VH7PCのコンテンツを制作して旧ウェブサイト(「まりも本舗」)に設けたのは、その時のトレンドであったという理由も一つであるが、今までいろんな場所で収集した情報を忘れないようにする備忘録としての役割が一つ、もう一つは周りにオーディオにあまり詳しくない友人らがこの製品を購入するにあたって、どのようにすれば質の良い「音」を出せるようになるかを分かりやすく伝えるためでもあった。
今回、一度公開を止めたコンテンツを再公開に至った理由は、(1)久しぶりにVH7PCに関するページを見て刺激された、(2)最近はケンウッドやダイヤトーンなどオーディオメーカーが消費者志向の変化により再び本腰を入れ始めたこと、(3)5年以上経った今でもVH7PCの情報を探している人が居ることを知ったからなどである。
なお、音質評価に関しては、2002から2003年当時に書いたものであり、6年以上たった今では、当時の状況に関しては正直だいぶ忘れてしまった。
今回、再度記事を載せるにあたって、文章の一部を手直しをしただけであり、中身はほとんど変更していない。
VH7PCとは
VH7PCとは、元々SOTECから発売されていたAFiNA AVシリーズ(AFM380R1およびAFM386C1)のUSBサウンド機能として売られていたが、さほど売れずに在庫過剰となったため、2001年11月あたりから単品で販売されるようになったPC周辺機器である。
ベースとなっているKENWOODのVH-7(RD-VH7+LS-VH7)は、1999年7月1日に定価66,000円(RD-VH7が46,000円、LS-VH7が20,000円)で発売された低価格ハイコンポである。
2002年7月あたりまでは、TWOTOPや上新電機、LA-OX、ナカヌキ屋各店などで売られていた。また、一時期ローソンやマーメイド(テレビ朝日の深夜通販番組)でも取り扱っていた。
2002年7月あたりに、SOTECの通販ページでもOP-VH7PCが19800円から14800円へと価格改定が行われた。
VH7PCとOP-VH7PCとの違いは、KENWOODの純正アプリケーションソフトウェア「GEOBIT/SOUND by KENWOOD」が付属してるか否かの違いである。
ついに市場から無くなったと思いきや、2002年8月末から上記で挙げた店で再び売られるようになり、LaOX各店舗で売られ続けていた。(2003年5月現在)
その後、たまにTAOでジャンク扱いの商品が出たりもした。
新品はたまにヤフオクでお目に掛かれるくらいで、市場に出回ってるものの多くは中古品である。
近隣のハードオフでもLS-VH7が8000円(ペア)で売っていたりするのをたまに見かける。(2005年11月現在)
なお、VH-7とVH7PCの大きな違いは、USB端子があるかどうかであり、単にアナログで出力するのならば特にどちらでも構わない。
また、VH-7自体は世界初の縦置きが可能でかつミニコンポとしては世界初のHDCDデコーダーを搭載した画期的な製品であった。
購入したきっかけ
VH7PCを購入したきっかけは、2002年に母校の高校に用事があった帰りにあらかじめ立ち寄ろうと思っていたTWOTOP東京本店の開店セールで、VH7PCが目玉商品として10台限定で9,980円といつもより3,000円ほど安く販売(通常は12,800円)されており、かつ在庫があったのが最も大きな理由であった。
また、1992年に購入したSONYのラジカセ(ZS-5)を近々買い替えたいと思っていた矢先というのも大きな理由である。
それに加えて、友人や先輩、後輩までもが続々と購入しているのに、自分が購入しないのは時代に乗り遅れて悔しいというミーハーな気持ちも要因の一つであった。
この機種を購入する一番の決め手となった理由は、「鳴沢の趣味の部屋」に記してあった『ま、「一切責任を負わない」と言う前提で評価するなら、バラコン(註:いわゆる単品コンポのこと)でCDプレーヤ+スピーカ+アンプで10万円クラスの組み合わせに匹敵するでしょう。』(2008年3月現在、過去ログは消滅)という鳴沢大気氏の一文に惹かれ、それは言い過ぎにしても、その道(オーディオマニア)の方がそれくらい言うのなら信用しても大丈夫だろうと思ったからであった。
対応OSについて
RD-VH7PCには、Windows 9x系ではWindows 98・Windows 98 Second Edition・Windows Me、Windows NT系ではWindows 2000に対応しているというお馴染みのWindowsのシールが張られているので、それらのOSに関しては事前にメーカーで動作確認をしているということだろう。
また、公式には対応していないが、多くの人が同じくNT系のWindows XPでも動作を確認している。(註:現在は公式ウェブサイトからWindows Xpに対応したUSBサウンドドライバをダウンロードすることができる。2009年4月26日現在)
Macでは、「人間城のぬしのぺーじ」や「旭の種」、「Desire for wealth」など多くのページでMac OS 9xやOS Xでの動作が確認されている。
また、日経Linuxの2002年6月号(P.68)には、Linuxでの動作が確認されている。同じUnix系の FreeBSDでも、「野沢菜」をはじめ、いくつかのページにおいて動作確認がされている。
私自身はWindows 2000での動作確認を行ったが、特に目立った音飛びや雑音などが入らず、普通に音楽を聴くことが出来た。
なお、USBオーディオの機能はIntelチップとVIAチップ以外だと動作が不十分な可能性があるので、NECチップやそれ以外のチップの場合は、そこまで高価なものではないので、新たに玄人志向などから発売されているVIAチップを採用したUSB2.0ボードを買って増設することをオススメする。(註:その後、Windows Xpでも動作確認を行い、特に問題なく使うことができた。2009年4月26日追記)
セッティングのススメ
まず、スイッチを入れたら、デフォルトとなっている「N.B.2」をOFFにしよう。
「N.B.2」とは、音量に構わず高音と低音を補正する機能であるが、これが入ったままだと不自然でかつドンシャリ(註:高音と低音が強調された音)な音がする。
もう一つ、「N.B.1」というのもあるけれども、これは音量に合わせて高音と低音を補正する機能であり、「N.B.」とはNatural Bass circuitの略称である。
私としては、TONEをBASSとTREBLEともに-8(つまり補正なし)にし、フラットな状態にして使うことをオススメする。
次に、スピーカーの方だが、まずは埃がつくことを気にしている人以外は真っ先にネットを外そう。
ネットをしたままだと音がこもってしまい、スピーカーの性能が生かしきれない。
また、本体の方ももちろんだが、安定した場所に設置しよう。
金属の棚なら、少なくとも下にMDF(中密度繊維板)の木製ボードや御影石を置くことをオススメする。(どちらもそんなに高いものではない)
また、スピーカーの下にインシュレータとして10円玉を三点支持だと3枚、四点支持だと4枚敷くだけでも「音」がだいぶ違ってくる。
なお、スピーカーが金属の上に置かれている場合は、逆に高音域がキンキンとしてしまうので、代わりに黒檀やアサダ桜とか木のインシュレータを置こう。
山本音響工芸とかから売られているようなオーディオ専用の本格的なものではなく、東急ハンズとかで売っているものでも十分効果がある。
当時、私自身はパソコンのモニターの左右に置いていただけであったが、ブックシェルフ型スピーカーはスピーカースタンドにセッティングして聴くと「音」が激変して全然感じが違うし、芯のある「音」がしっかりと鳴るようになる。
金属製のスタンドなら木製のインシュレーター、木製のスタンドなら金属のインシュレータを置くと良い。
もし余裕があれば、レシーバーの下にもインシュレータを置いたり、スピーカースタンドの下にも堅い木製のボードや御影石を置くと、より「音」のしまりが良くなる。
色々と試行錯誤をしてみて、自分の気に入る「音」を探すのがベストである。
余談だが、スピーカーの置いてある位置と座ってリスニングする位置を線で結んだ時にトライアングルになるのが最適な置き方だ。
なお、小音量で聞く場合、人によって感覚が違うので一概には言えないけれども、「N.B.1」でも結構良い感じに聞こえる。
ケーブルの変更
標準のスピーカーケーブルには、多くの人と同様に不満を感じた。
たまたま、VH7PCはスピーカーからのケーブル直付けではないので、幸い安物のミニコンポのスピーカーとは違い、簡単にケーブルを替えることが出来る。
また、スピーカー端子自体もそれなりの大きさからそれなりに太いケーブルでも使えるので、BELDENの727MK2など一部の太いケーブルを除けば、好みに合わせて比較的自由に取り替えることが出来る。
そこで、オススメのスピーカーケーブルとしてよく取り上げられるのが、1000円以内で買えてかつコストパフォーマンスの高いTara LabsのPrism Omni-8nとBELDENのSTUDIO 718MK2である。
後者のような比較的太いケーブルでも対応できる理由としては、本体とスピーカーの両方の接続端子がバナナプラグ対応になってるからである。
私自身は718MK2の方を愛用しているが、標準のケーブルと比べて「音」の情報量が一気に増したように感じた。
最近だと、ORTOFONのSPK-3100 SILVERやMONITORのATMOS AIR 309Cなんかも1000円前後で入手できる。
エージングの仕方
スピーカーを始め、新品のオーディオ機器にエージングは欠かせない。
エージングとは、ある程度の大音量で鳴らしながら馴らし、劣化させて落ち着かせることである。
短くても2~3時間、長いと200時間ほどかかる。
巷では、サイレン音を大音量で流せばエージングは早く終わると言われているが、それをやってしまうと変な癖が残ってしまうことがある。
初心者は止めておいた方が無難であろう。
好きな音楽を流してエージングすることをオススメする。
購入後すぐのエージングが終わらないうちは、店頭とは違って酷い音かもしれない。
けれども、長い時間じっくり鳴らすことによって、鳴らせば鳴らすほどしっくり馴染んできて、徐々に良い「音」になる。
VH7PCの場合、スピーカーが85dbと低能率な上にレシーバーのアンプ出力のパワーがあまりないので、使用頻度にもよるけれども、だいたい2~3ヶ月はかかるだろう。
音楽を聴きながら気長に待つしかない。
音質評価
KENWOODのスピーカーは、しばしばドンシャリしていると言われているが、ことこのスピーカーに関してはそこまでドンシャリ感があるとはあまり感じない。
先ほど「セッティングのススメ」でも軽く触れたが、ドンシャリとは低音域(ドン)と高音域(シャリ)を不自然に強調して「音」を派手に見せることであり、ざわついた量販店の店頭とかで良く聞こえる製品は、多くはドンシャリな製品である。
最近の多くのスピーカーおよびアンプは、(トレンドとは言え)このようにドンシャリな感じの製品が多くなってしまったので、なるだけフラットでナチュラルな「音」が好きな私としては非常に残念だと思っている。
店頭で試聴する時の注意点としては、BASSやTREBLEなどTONE機能が入ってることが多いので、それらを切ってから試聴してみることをオススメしたいし、私自身は常に実践している。
邦楽からクラシックまでどんなジャンルでも何でも無難にこなすけれども、いかんせん高音域に関しては苦手な面がある。
例えば、広瀬香美など高音域を得意とする曲を聞くには正直あまりオススメしない。
けれども、一般の曲を聴いてる分には特に問題はないと思う。
中音域に関しても、高音域の状態と同じまではいかないでも、同様にあまり出ていない気がする。
なお、録音の品質が悪い音楽CDや打ち込み系の曲であっても比較的うまく聴かせてくれる。
ヘッドホン端子について
ヘッドホンを使用したい場合、RD-VH7PCのヘッドホン端子を使うことをあまりオススメできない。
しかしながら、試聴に使用したヘッドホンがインピーダンスが600Ωと高いAKGのK240 MONITORだから、この記事は信用に足るまで至らないかもしれない。
「音」を加工した打ち込み系の邦楽を聴いた時は特に分からなかったが、カラヤン指揮の「ニュルンベルクのマイスタージンガー(ワーグナー)」前奏曲で確認してみたところ、本体の音量を50目盛り以上(B級アンプ機能の状態)にすると、徐々にホワイトノイズが目立ち始めた。
せっかくの演奏に「サー」と乗ってしまい、聴くのが非常に耐えがたかった。
これらの経験から、どうしてもヘッドホンをメインに音楽を楽しみたい人は、新たにヘッドホンアンプやヘッドアンプ機能のあるアナログミキサーを買って、RD-VH7PCの出力端子から各々の機器に繋いで聴いた方がより音楽を楽しむことができる。
それらの機器はコストパフォーマンスに優れているだけでなく、小さいので場所を取らずに済む。
将来DTMや音の編集、または自主番組の制作をするときにも使うことができる。
また、デスクトップ型パソコンで音楽を聴いている人は、ヘッドホンアンプを搭載したサウンドカードを新たに買って増設し、普段はアナログ接続でRD-VH7PCにつないで音楽を聴き、ヘッドホンで聴く場合のみサウンドカードのヘッドホン端子を利用するのも一つの手だろう。
総合評価
『買いなの?それとも買いでないの?』と言われたら、私は間違いなく置くスペースがあるのなら『絶対買いだよ!!』と答える。
レシーバーまたはスピーカーの単品販売のみの価格であったとしても12,800円は安い。
ミニコンポは、特価品を除いても、30,000円前後で売られているのが普通なので、この価格帯(10,000円~15,000円)だとぜいぜいアンプ内臓の高級アクティブスピーカーぐらいしか買うことができない。
流石にクラシックなど繊細な「音」を聴くにはいささか不足ではあるが、現在すでにピュアオーディオにのめり込んでいる人(註:オーディオマニア)でない限り、十分満足できる音質を提供してくれる。
一般の人がPOPSやROCK、クラシックを聞く限りは全く問題ないと思う。
しかしながら、どうしても愛着があるとかの理由以外なら、今更中古で10,000円を出して購入しようとは思わない。
もしこれから音質に期待してVH7PCを新たに欲しいという人がいるならば、スロットインCDゆえの埃の弱さと純A級アンプにより熱を帯びることによってハンダクラックしやすく壊れやすいことを考慮すると、新品での格安の購入以外ならば、迷いなく現行のKENWOODのミニコンポを予算に応じ、純正の組み合わせや本体+能率の高い中古のスピーカとの組み合わせをオススメする。
その他
私がVH7PCを購入した当日の思い出
購入した当時、私と一緒に買い物に行った高校時代の友人であるK氏も当日に聴いてみたいと思い、ソフトピアぽち(註:現在は名称変更して移転。2009年 4月26日追記)の通りの角にあったツクモ電機でカートを購入し、14.5Kgもあるレシーバー+スピーカーのパッケージを持ち帰った。
秋葉原駅の6番線ホームに行く階段を上るのが非常に辛かった記憶が懐かしい。
その後、K氏の家に寄るため、錦糸町駅から彼の家までカートを引きながら歩いたが、その日は暑かったのでかなりしんどかった。
帰りはK氏の車(註:日産 エルグランド)で再び錦糸町駅まで送って頂き、横浜に帰宅した。
帰宅して一休みした後、早速パッケージを開けてみたが、普通のミニコンポとは何ら変わらずの構成であった。
当時、ONKYOのGX-R3とSW-5AをPCオーディオとして使っていたので、VH7PCを普通のミニコンポとして使う用途で購入した。
パソコンの周りではなく棚の上に置いたが、かなりのスペースを要するので、部屋の空間が狭いゆえにセッティングに苦労した。
セッティングが終わって少し休んだ後、当時のリファレンスCDであった「Ornithopter」の2曲目に収録されている「鳥の詩」を皮切りに、LEAF VOCAL COLLECTION (Vol.1)、お気に入りの邦楽、洋楽、クラシックなど持っているお気に入りのCDを次々とかけて、久しぶりに夜中まで音楽を楽しんだ。
私の所有するVH7PCの現状
現在(2009年5月3日)の私のVH7PCの状況は、2003年10月に大学時代の友人であるT氏にVH7PCの一部を構成しているLS-VH7を譲ってしまったので、手元にはRD-VH7PCしか残っておらず、CD-Rに焼いた音楽CDを再生する時やラジオを聴く以外は特に使用していない。
一度単品のCDプレーヤーで音楽を聴いてしまうと、残念ながらもうミニコンポの「音」には戻れないのが本音である。